『競争政策の経済学』 競争政策の諸問題に対する経済学的アプローチ

2005年11月15日
NERAエコノミックコンサルティング編

本書原著の成立の経緯には、非常に興味深いものがある。1961年以来、NERA(National Economic Research Associates, Inc.)のエコノミストたちは、企業合併、買収その他競争法上の訴訟との関連で、具体的な反トラスト法事例の理論的・計量的な経済分析に根差して、専門家としての証拠の提供と証言を行う役割を果たしてきた。この経験に基づいて本書の編者と同僚エコノミストたちが定期的に公刊してきたエッセイの中から、現代の競争政策上の問題に対する経済学的・統計学的な証拠の意義と、その発見方法を論じた興味深い論説を精選して構成されたのが本書である。この経緯から見ても、現実の反トラスト法事例に取り組んだ経験を踏まえて書かれた新鮮な教材として、競争法と競争政策に興味を持つすべての人々にとって、本書は類書に乏しい魅力を持つといってよい。しかも、競争法上の訴訟事件に対して経済学的な証拠と証言を提供するサービスの市場で、熾烈な競争に現実に参加しているエコノミストたちが執筆しているだけに、本書の記述はアカデミックな教科書にありがちな空疎なドクトリンや難解な原理の解説とは無縁である。また、発見した証拠の説得力と証言のアピールによって司法判断への影響力を競うことを業務としているだけに、執筆者たちの叙述と説得の技術は経験によって磨かれて巧妙の域に達している。スタンダードな競争法やミクロ経済学・計量経済学のテキストブックを補完する教材として、推薦に値すると考える所以である。

—『競争政策の経済学』日本語版への序文より抜粋—
鈴村 興太郎 (一橋大学経済研究所教授/公正取引委員会競争政策研究センター所長)

目次

I. 企業の合併・買収の経済分析 
第1章 電力会社の合併による競争への影響予測 
第2章 計量経済学を用いた市場の画定:起こり得る矛盾の解説 
第3章 需要の弾力性を決定する2つの方法と、その方法の合併シミュレーションへの利用 
第4章 合併規制執行における競争阻害の新旧理論を用いたあいまいな経済分析 
第5章 垂直合併の効果分析:市場シェアよりも重要となる誘因の分析 
第6章 技術革新市場分析:ジェンザイム・ノバザイム買収ケースからの教訓  
第7章 欧州の合併規制執行における実証的手法の適用の増加:過去の教訓と将来を見据えて 

II. 商慣習および商行為における競争への影響 
第8章 略奪的行為に対する価格・コストテストの実施:実務上の問題点 
第9章 価格差別の見落とされがちなメリット 
第10章 バンドリングの競争的影響の評価:オーストラリアの事例  
第11章 病院の契約慣行  
第12章 反トラストと知的財産の経済学との共通点:シュンペーター派の考え方 
第13章 集団訴訟認定の経済学的要素 
第14章 利益の持続性についての要点

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