ジュピターテレコム株式取得価格決定事件(最高裁決定平成28年7月1日)における株式価値評価に基づく紛争サポート

概況

住友商事株式会社とKDDI株式会社による株式会社ジュピターテレコム(以下「JCOM社」)の買収に伴い、JCOM社の少数株主がスクイーズアウト(少数株主の株式の強制的な買取)されたことに関して、一部の少数株主が全部取得条項付種類株式の取得価格決定の申立てを行った事案です。

NERAの役割

NERAは、申立てを行った株主より、裁判所への提出を目的とした、公正な株式買取価格の価値評価意見書および相手方が主張する株式買取価格が不適切であることについての意見書の作成の依頼を受けました。

NERAは回帰分析の手法により株価を算定し、その分析手法と結果について述べる専門家意見書を作成しました。また、相手方の専門家からNERAの意見書に対して反論が行われたため、それに対して再反論を行いました。

公正な株式買取価格の決定については様々なアプローチによる算定方法が実務では用いられていますが、米国証券訴訟では回帰分析の手法が多く用いられており、日本でも同種の訴訟において徐々に用いられるようになっています。同種の証券訴訟に関する豊富な経験を有するNERAは、統計学および計量経済学・ファイナンスの学術研究と米国証券訴訟における実務の観点から最も合理的と考えられるアプローチによる株価算定を行いました。その結果、算定された価格は相手方が提示する株式買取価格よりも高いことが明らかになりました。

NERAが意見書で主張する分析結果に対しては、相手方の複数の専門家から反論が行われました。これに対してNERAでは、学術・実務両方に知見を持つ強みを活かし、相手方専門家によるいずれの反論も学術・実務の観点からは妥当性に欠けるものであることを明確に指摘する反論意見書を作成しました。

結果

東京地裁・東京高裁は、NERAの算定方法の妥当性を一部認め、株式の買取価格を上方修正する決定を下しましたが、最高裁は当初の株式買取価格は公正な手続きにより決定されたものであることを理由に、買取価格の修正を認めず当初の買取価格を維持するとの決定を下しました。

この最高裁決定については、申立人側代理人である豊島真弁護士と共に「JCOM事件最高裁決定の考察 -その問題点と射程範囲および価格の算定方法-」(金融法務事情 No.2060, 2017年)にてコメントしています。