インテリジェンス事件東京高裁決定

概況

人材紹介サービスなどを提供する株式会社インテリジェンスと、放送・通信事業を行なう株式会社USENとの間の合併に際して、インテリジェンスの少数株主は、裁判所に対し株式価格決定の申立てを行いました。

NERAの役割

NERAはイベント分析の手法を用いて、適用するべき公正な株価の評価を行いました。

わが国の会社法は、組織再編に反対する株主が会社に対し公正な価格で株式を買取るよう請求する権利を認めていますが、組織再編により株主にとりマイナスの シナジーが生じた場合には、公正な価格とは組織再編がなかったと仮定した場合の価格(ナカリセバ価格)になると考えられています。

従来の判例の多くは組織再編の計画発表に先立つ一定期間の平均株価を公正な価格として決定していましたが、 組織再編が完了し法的な効果を持つ効力発生日など法的な評価時点(基準日)と、株価を参照する計画発表日前の期間との間に数カ月の時間差を伴うということ の合理性が議論の対象となっていました。とりわけUSEN-インテリジェンス間の合併については、計画公表日と効力発生日の間の期間はリーマンショックが 発生し、金融危機が深刻化していった時期と重なっていました。同期間において株式市場は急落しましたが、公正な株価の算定において、このような一般的な市 場環境の変化を補正すべきか、補正するとすればどのような方法によるべきか、が重要な争点の一つとなっていました。

結果

本件は会社法や金商法 関連の事案においてマーケットモデルによる回帰分析に基づく株価補正が認められた初の事例となりました。なお、2011年4月に最高裁は本件を東京高裁に 差し戻しましたが、回帰分析による株価補正の手法自体は裁判所の裁量の範囲内にあるものとして引き続き認められています。