独占禁止法と競争政策

企業結合及びジョイントベンチャー

独占禁止法は、合併、買収、事業統合、共同出資会社 (ジョイントベンチャー) の設立といった企業合併 (企業結合) が市場の競争を妨げると考えられる場合には、その企業合併を禁止しています。規制実態としては、我が国においては、公正取引委員会が企業結合ガイドライン (「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針 (平成16年5月31日発表、平成23年6月14日改定)」) に則り、企業合併を審査・規制しています。

合併審査 (企業結合審査) では、まず、企業合併が影響を及ぼしうる範囲となる「関連市場 (一定の取引分野)」が画定されます (市場画定) 。次に、企業合併がその市場の競争を実質的に制限することとなるか否か審査されます。市場の競争を減退させると判断された場合には、企業合併の禁止や合併計画の変更が要求されます。同様の規制や審査は、米国 (米国法務省 DOJ: Department of Justice 及び連邦取引委員会 FTC: Federal Trade Commission)、欧州 (欧州 委員会 EC: European Commission)、韓国 (韓国公正取引委員会 KFTC: Korean Fair Trade Commission) といった日本以外の国においても、ほぼ同様に行われています。

このような企業合併への独占禁止法規制は、企業にとって事業計画上のリスクになります。企業の独占禁止法上の規制への対応が不十分であると、合併の合意に至るまでに膨大な時間や費用を費やしながらも、最終段階になって企業合併の禁止や合併計画の大幅な変更が要求される可能性があります。合併や買収を計画する企業は、リスク管理の一環として独占禁止法規制に対して十分な準備と対応をする必要があります。

NERAは、企業結合及びジョイントベンチャーに関する分析において、幅広い経験を有しています。企業結合の独占禁止法上リスクの予備的な評価、企業結合の競争への影響について分析するレポートの作成や競争当局(日本の公正取引委員会、韓国の公正取引委員会、米国法務省・連邦取引委員会、欧州委員会、中国商務省、豪州競争消費者委員会等)への説明、競争当局からのデータリクエストや第二次審査請求への対応、また、企業結合に関わる訴訟において専門家証言を提供しています。NERAのこのような経済分析は、市場競争の実態に即した当局の判断を引き出す重要な役割を果たしています。

NERAは、市場メカニズムや企業間競争の実態を理解した上で、上記の「市場画定」や「競争への影響」の経済分析サービスを提供しています。例えば、商品の価格や取引数量のデータを用いて、合併する企業が提供している商品やサービスとの代替性 (競合関係) を推定することにより、当該合併の係わる領域 (商品範囲・地理的範囲)の競争の実態を反映した市場画定を行います。市場画定により、合併企業の市場シェアや、市場集中度 (HHI、ハーフィンダールハーシュマン指数が採用されています) の大きさが決定されるため、規制当局から実態からかけ離れた狭小な市場を画定される危険を避けるためには、市場メカニズムや競争の実態を反映した経済分析は、有効な手段になります。

企業結合がもたらす「競争への影響」に関しては、近年、市場シェアや市場集中度のみに依拠した単純な規制から脱却して、経済理論的な考え方に即した規制が行われています。そこでNERAは、経済学的な分類による企業合併のタイプ (水平合併・垂直合併・混合合併) や経済理論上の競争制限のシナリオ (単独効果:unilateral effect、協調効果:coordinated effect) 等を前提として、それぞれの企業合併が係わる市場における参入や輸入の容易性、商品・サービスの代替性、競争者の供給余力、ユーザーの価格交渉力等 (考慮要因) が市場競争にどのような影響を及ぼすのかを分析します。NERAは、それらの考慮要因を経済理論的な枠組みでどのような意味があるのかを説明し、また、その程度について定量的な評価を提供することができます。このような経済理論的な説明や経済分析による数字の評価により、競争の実態を反映しない過剰規制のリスクを低下させることができます。

NERAは、農業、鉱業、製造業、通信産業、小売・卸売、金融、医療・医薬、サービスといった広範な産業分野における企業結合問題に精通しています。NERAは数多くの国際的な企業結合の案件にかかわってきました。例えば、Anheuser Busch/InBev、Sun/Oracle、Conoco/Phillips、Merck/Schering Plough、Thomson/Reuters、Inco/Falconbridge、Universal/BMG Music Publishingなどは、NERAが企業側の依頼により経済分析を提供しました。

日本においては、公正取引委員会の主要な公表事例に採用されるような数多くの大型・国際的企業結合・ジョイントベンチャーの計画に対して、経済分析サービスを提供しています。日本においても、欧米と同様に、当局側でエコノミストを起用して積極的に経済分析を行う姿勢を明確に打ち出しており、当事会社側でも定量的な証拠に即した主張を行っていくことが求められるようになっています。公取委の判断を受動的に待つという対応は、想定外の規制リスクを生じさせる可能性もあります。

また、日本以外の競争当局による審査の対応の場面で、NERAの海外事務所と協力しながら、各国の事情に即した経済分析による支援を行っています。

NERA東京事務所では、ほぼ毎年のように、大型企業結合に関わる企業結合審査対応や、予備的段階における企業結合審査規制リスクの評価のサービスを企業に提供しています。

名前 役職 開催場所 電話番号 Email
石垣 浩晶 (Dr. Hiroaki Ishigaki) シニアマネジングディレクター (Senior Managing Director)
東京事務所代表
東京 +81 3 6871 7041 hiroaki.ishigaki@nera.com
タイトル タイプ 著者
経済分析による審査期間の長期化等に要注意「令和3年度主要企業結合事例にみる公取委の審査基準」 Published Article 石垣浩晶
小売業界における競争に関する文献レビュー Report NERAエコノミックコンサルティング
プラットフォーム事業者への規制強化が顕著に 「令和2年度主要企業結合事例にみる公取委の審査内容」 Published Article 石垣浩晶
企業結合・業務提携の独禁法上のガイドライン・審査制度における日本の傾向とその実務的示唆~2019年経済産業省委託調査における国際比較より~業務提携編(上)(下) Published Article 石垣浩晶・矢野智彦・竹田瑛史郎
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積極化する経済分析の活用 令和元年度主要企業結合事例にみる公取委の判断基準と審査内容 Published Article 石垣浩晶
企業結合審査における審査の考え方及び経済分析の実施体制に関わる国際比較~令和元年度「我が国及び主要国での企業結合審査等における経済分析の活用等における調査」~ Published Article 石垣浩晶・矢野智彦・竹田瑛史郎
令和元年度産業経済研究委託事業(経済産業政策・第四次産業革命関係調査事業費(我が国及び主要国での企業結合審査等における経済分析の活用等に関する調査)) Report NERAエコノミックコンサルティング
独禁法規制・訴訟対応への応用 Published Article 石垣浩晶
合算市場シェアが高くてもクリアランスのチャンスあり 平成30年度主要企業結合規制にみる公取委の判断基準と審査対応策 Published Article 石垣浩晶
タイトル 開催日
ウェビナー録画公開中【2023年9月開催】NERA ウェビナー「独禁法の企業結合規制への最適対応:経済分析とアンケート調査の活用」 2023年9月29日
【2023年5月開催】NERAセミナー「カルテル・談合事件における経済分析の活用」 2023年5月26日
【2022年5月開催】NERAウェビナー「企業訴訟・規制対応を円滑に進めるためのエコノミスト活用2022」 2022年5月19日
【2021年8月開催】NERAウェビナー「令和2年度の主要な企業結合事例に見る独禁法上の企業結合規制の最新動向」 2021年8月26日
【2021年7月開催】NERAウェビナー「個人情報・営業秘密漏洩の損害賠償」 2021年7月20日
企業結合事案における経済分析の最新動向と検討 2020年11月11日
【2020年9月開催】NERAウェビナー「独禁法上の企業結合審査における経済分析の最新動向」 2020年9月18日
【2020年7月開催】NERAウェビナー 訴訟・規制対応の場面におけるエコノミストの役割 2020年7月17日
【7月開催】森・濱田松本法律事務所・NERAエコノミックコンサルティング共催セミナー「複雑・困難化する独禁法審査をいかに乗り切るか:平成30年度主要な企業結合事例及び近時... 2019年7月17日
【4月開催】訴訟・規制対応の場面における経済学専門家の役割:NERA東京事務所紹介セミナー 2019年4月23日