小売業界における競争に関する文献レビュー

2021年12月16日
NERAエコノミックコンサルティング

NERAは、「小売業界における競争に関する文献レビュー」と題する研究レポートを作成しました。本研究はアマゾンジャパン合同会社の助成のもとで行われました。

本レポートは、近年の経済学関連分野の研究成果のレビューを通じて、総合ECサイトビジネスを中心として小売業界における競争に関する主要な論点の検討を行いました。その結果、以下の3点の結論が得られました。

第一に、総合ECサイトビジネスを含む小売業界における競争は間接ネットワーク効果だけでなく、差別化、マルチホーミング、混雑効果等多種の競争条件によって特徴付けられ、これらの競争条件の相互作用によって競争のダイナミズムが決まるため、必ずしもティッピングによる独占が生じるわけではない。実証的にも、総合ECサイトビジネスを含む小売業界において独占ではない状況がしばしば観察される。

第二に、一時点における事業分野や業界の状況を見て、競争の状況を判断するのは妥当ではない。むしろテック企業においては、動学的な競争のメカニズムが適切に働いているかどうかがより重要となる。独占的とされる事業者に対しても、潜在的な新規参入者からの競争圧力が強く働いている可能性がある。

第三に、ビッグデータを活用出来ればビジネスの魅力を高めて競争力を高めることは可能だが、ビッグデータが競争を消滅させるほどのネットワーク効果の源泉となり参入障壁となるという実証的証拠は得られていない。ビッグデータを特別視しすぎるのは間違いである。

総合ECサイトビジネスを含む小売業界の競争に関する研究は現在進行形で活発に行われており、特に、実際の総合ECサイトビジネスのデータを用いた理論の検証、政策効果の評価といった実証研究については、今後さらなる発展が見込まれます。こうした研究の成果が、総合ECサイトビジネスを含む小売業界における競争をめぐる議論の更なる進展につながることが望まれます。

以上の議論の詳細については、本研究レポートをお読みください。