キリン「氷結」ダイヤカット缶立体商標の認識度調査

概況

2001年に発売した缶チューハイ「氷結®」シリーズの容器に用いられる表面にダイヤ形の凹凸が施されたアルミ缶の立体形状を商標登録するため、キリン株式会社は2015年に登録申請しましたが、特許庁から拒絶査定を受けてしまいました。

「ダイヤカット®缶」と呼ばれる容器は長年「氷結®」シリーズに使用されてきたもので、シリーズの販売実績は十分に認められるものの、販売時には缶の表面に絵柄と共に「KIRIN」や「氷結®」等の文字が印刷されていたため、立体形状そのものの識別力をいかに立証するかが問題でした。立体形状そのものの識別性を示すには、絵柄も文字も取り去ったアルミ缶を見た需要者がその形状だけで出所を認識できるかどうか検証しなければならず、需要者アンケート調査は決定的に重要な立証手段でした。

キリン株式会社は、使用による識別力獲得を立証するため、NERAエコノミックコンサルティングに需要者アンケート調査を依頼しました。

NERAの役割

調査を実施するにあたっては、「ダイヤカット®缶」を店頭で見かける場合、缶の表面の絵柄、「KIRIN」や「氷結®」等の文字などを確認できるにもかかわらず、裸のアルミ缶の画像のみを見せられた消費者が「氷結®」シリーズを想起できるか懸念がありました。

また「ダイヤカット®缶」は手触りにも特徴がある飲料缶であり、実物を確かめることのできない状況で認識を問うことも難しい問題でした。

NERAは批判に耐えうる堅牢なアンケート調査を実施した上で、「氷結®」シリーズの需要者の特性に着目し、缶チューハイ市場の売上に占める割合の高いコアな需要者の認識を鍵に、需要者一般における立体形状そのものの識別性がかなりの水準に達していると推論できるという分析結果をまとめた報告書を提出しました。

結果

拒絶査定不服審判で拒絶査定が覆り、商標法3条2項が適用され、「ダイヤカット®缶」の立体商標が登録されることになりました。